司伝の過去作レビュー

『溺れる白昼夢』は2017年に発売された、ヤマダユウヤ氏作の商業アダルトコミックだ。
ヤマダユウヤ氏はCOMIC BAVELなどに漫画を掲載しているエロ漫画家の先生である。文学のような空気感の伴う作品を作り、その生々しさが大きな魅力となっている。
本項では『溺れる白昼夢』の魅力と、それについての私の評価をまとめていきたい。
【収録作品】
- 芳醇シスター
- アトリエ白昼夢
- 変わらないもの
- Secret Case
- 雨音色
- 君の薬
- 妄想ストレンジLOVER
- ゆりの花 前後編
- 寝不足の情事
- かおるシンドローム
『溺れる白昼夢』の魅力

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『溺れる白昼夢』は全11篇で構成されているオムニバス短編集だ。
本冊はヤマダユウヤ氏の処女作となるが、すでにその独特な生々しさはある。決して華やかではないが、登場人物たちは実在しているのではないかと思えるほどの存在感を持っている。
エッチは3Pが一作のみあるが、基本的には恋人、または両想い同士のいちゃラブである。それなのに似通わないところも作者のスキルだろう。男女の距離感を繊細に描き、単なる甘いセックスもオンリーワンのものに仕上げている。

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お気に入りの短編は「変わらないもの」だ。幼なじみの男女の物語である。
ヨウスケは幼なじみのアキラのことが好きである。しかし、アキラはもう一人の幼なじみ、コウジのことが好きだった。そんなコウジに彼女ができたことで、ヨウスケとアキラは動揺する。落ち込んでいるように見えるアキラの口から「もう彼女とヤったのかな?」という疑問が出てくると、ヨウスケは「アキラはヤってみたい?」と問う。すると、彼女は首肯し……。
まさに思春期の性衝動と言った感じ。単なる失恋とも言い難い複雑な心境が表現されている。アキラはまだコウジが好きなのかもしれないし、ひょっとするとヨウスケが好きなのかもしれないし、ただ三人一緒に大人になりたかっただけかもしれない。そんな繊細な心が表現されている1篇なのだ。

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ヒロインの心境が上手く表現されると、よりそのヒロインの存在感が増し、セックスの対象として魅力的に映る。ヤマダユウヤ氏は、そんなエロ漫画を作り上げる稀有な先生なのである。
【まとめ】溺れる白昼夢
司伝評価
絵柄 | |
物語 | |
キャラクター | |
抜き | |
生々しさ |
- 生々しい雰囲気を重視したい
- 思春期らしい性衝動に興奮を覚える
- 繊細な心理描写でドキドキしたい
『溺れる白昼夢』は以上のような方々にオススメしたい。処女作ながら、しっかりとヤマダユウヤ氏らしさは完成されている。アニメっぽい華やかなヒロインも良いが、時にはこういうリアリティのあるヒロインも良いものである。
本作については以上である。それでは、またの機会に。

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