【エロ小説】旅館さくらの葉奈子ちゃん3話①【風俗】

官能小説

今週から三話の掲載を始めます。

3話 魅惑の一夜1

 割烹旅館さくら。小柄ではあるけれど、人を泊めることの出来る立派な旅館だ。

 外を歩くと、同じようなサイズの旅館がいっぱいある。
 扉付近には『風俗営業許可店』とか『十八才未満の方の入店お断わり致します』の文字。そこはスルーしよう。(っていうか最初に気付け、私)

 こういう場所だけど、段々になってる町並みは好き。いくつもある階段は山の上のほうへと繋がっていて、上っていくと最後にはお寺にたどり着く。
 そういえば、山を登っていくとお寺に着くから寺山新地なのだろうか。単純明快だ。

 見晴らしの良いところへ行くと、下の町が一望できる。そこは本当に普通の日常があって、ひょっとするとここにこういう場所があることを知らないのかも、って人がいっぱい住んでいる。
 ちょっと上るだけで世界が変わる。やっぱりここは天国に近いのかもしれない。なんちゃって。

 今まで住んでいた、関東の人の多い町とは違う。私は今新しい生活をしているんだって思うと少し元気になる。
 そこでの新しい仕事も本当に別世界のものだ。まあ非常に人間的ではあるけれど。
 人を元気にする仕事だと思って、私は頑張ってます。

 今日は女将さんと買い出しに出ていた。

「泊まりの客、ねぇ……」

 優しい女将さんはいつも私の心配をしてくれる。今日の困り顔の原因は、旦那さんの「そろそろ泊まりの客を取るか!」って提案が原因になっている。

「まあ、相手がろくさんだから大丈夫ですよ」
「うーん、あの人もちょっと変態の気があるからね……」

 私の常連第一号、初体験のお相手でもあるろくさんは私にメロメロである。旦那さんの台詞、泊まりの――の段階でもう立候補していた。

「女将さんでもお客さんのそういうところを知ってるものなんですか?」
「え? ……まあね。そもそも、はなちゃんみたいな子に必死になる大人なんてみんな変態よ」

 女将さんは優雅とは言えない感じに紅茶を飲む。気持ちはわかるけど、私を好きになる人は変態しかいない、って言われたみたいで複雑。もうこの歳じゃ、このロリ体型をどうにも出来ないし、これじゃあ私は変態としか結婚できないということでは?

「小石さんも、同じ変態でも違うタイプの変態だと思ってたんだけどねぇ。結局、男はロリコンかマザコンしか居ないってことなのかしら」
「あはは……」

 私の常連第二号、エッチの名人小石さんまでディスっちゃう女将さん。確かに小石さんは風俗大好きな変態さんだけど、悪い人ではないんです。

「でも、本当に二人とも優しいですよ。お金貰うのが申し訳ないくらい」
「申し訳ないことなんてないよ。お金が発生しないと、あんな人と関わることすらないだろう、はなちゃんは」

 確かに。

「……うちの旦那の思うつぼじゃ駄目よ」

 うちの旦那、とはもちろん旅館さくらの旦那さんのことだ。頼りにはなるけど、デリカシーの無いセクハラ親父。私をここに繋ぎ止めた張本人である。

「思うつぼ、ですか……」
「はなちゃんを手放したくないから、優しい客で慣れさせようって魂胆だから」
「……それって私にとって悪いことじゃないんじゃ?」
「そりゃあ、はなちゃんが元々こういう仕事に就く気だったなら良かったよ。でも、はなちゃんはそうじゃないだろう?」

 そう、私の希望は仲居さんである。私のやってることは仲居さんのサービスとしては過剰というもの。

「そう……ですね」
「楽に儲かるって思わせるのがあの人の策略。こんなもんかって思ってるうちに慣れてくのよ。はなちゃんも変なお客に当てられる前にちゃんと稼いで、堅気の仕事に戻るんだよ」

 堅気の仕事。そういえばこれって堅気じゃないんだ。確かに慣れるのは怖いことかもしれない。
 でも、私が居なくなることで女将さんは困ったりしないのだろうか。私の稼ぎが旅館にとって重要だと思ってたんだけど。

「……私が居なくなったらどうなるんでしょう?」
「そんなこと考えなくていいの。はなちゃんは自分のことだけ考えて、一人で暮らせるくらいのお金を持ったらすぐに出て行くんだ。染まり切る前にね」

 女将さんは悲しそうな顔で言った。いつもの困り顔からさらに口元の緩みが消えた顔。女将さんは私のことを考えるとき、時々こんな顔になる。
 私をこの仕事に就かせた罪悪感。女将さんはずっと気にしているみたい。だからこそ私は楽しそうに仕事をすることを心掛けているけれど、それが尚更不安を助長させているらしい。

 私はどうも落としどころというものがわからない。女将さんや旅館のために頑張りたい気持ちとお金欲しさが働く動機だけれど、働くことに楽しさを覚えると、女将さんは心配そうに私を見るのだ。
 それに、怖い仕事で危ない仕事ではあるのだろうけれど、私にとって嫌な仕事ではない。喜んでくれるのは嬉しいし、お金がいっぱい貰えるのも嬉しい。
 多分、この特殊なサービス業は、私に向いているものなのは間違いないのだった。

3話 魅惑の一夜2

 一方で旦那さんはフリーダムである。

「おつかれ、ゆみさん。今日の客はどうだった?」
「別に感想も何も無いわ。可も不可も無く」
「イッた?」

 置屋というところに待機しているらしいベテランの人、ゆみさんは今日もうちでお仕事をしていた。最も遭遇率の高い女性。週にどのくらい勤務しているのだろう。
 そんなゆみさんに、出てきてすぐにそんな質問を投げかける旦那さん。本当にデリカシーの無い人だ。

「イカないわ。きっと私ももう枯れ気味なのよ」
「んなことないさ。何なら、俺がイカせてあげるよ」
「旦那は、あんな美人の奥さんが居てよくそんなこと言うわね。まあ、確かに旦那にならイカされちゃいそうだけど」

 旦那さんはゆみさんのお尻を触る。ゆみさんは特に嫌がるわけでもなく、そのまま触らせている。ここは怒るほうが大人だと思うな、私は。

「女将さんに言いつけますよ」

 部屋の掃除に向かう途中だった私は、掃除機を持って突っ立っていた。

「うわっ! びっくりした! なんだ葉奈子、覗きか?」
「覗かなくても見えるじゃないですか」
「ほら、おいたしていると言いつけられちゃうわよ」

 ゆみさんはポンと旦那さんの背中を叩いて、そのまま去っていった。もう上がりか、それともまた置屋に戻ってまた呼ばれるのを待つのだろうか。
 でもそれより、今は旦那さんに釘を刺さねばなるまい。不倫は犯罪なのだ。

「旦那さんはみんなにセクハラしてるんですか?」
「人聞きの悪いことを言うな。ただのコミュニケーションだろう」
「あれがコミュニケーションなら、痴漢は存在しません」

 近づいてくる旦那さんに対し、私は掃除機のノズルを剣のように向ける。もちろん、距離を取るためだ。

「せっかくコミュニケーションを取ろうとしたのに」
「いりません。本当に女将さんに言いますよ」
「別に言ったって良いよ。あいつは俺のそういうところを分かり切ってるんだからな。はっはっは!」

 旦那さんは悪人みたいに笑う。いや、みたいじゃないか。犯罪だし。

「セクハラが過ぎるようだと出るところに出ますからね」
「こらこら、それだと旅館ごと無くなるぞ。住むところは大事にしな」

 ここだと警察の介入がそういう方向に繋がるのか。堅気じゃないからなぁ。

「それに、俺はゆみさんと何度もやった仲なんだから、尻ぐらいで今更なんとも思わないさ」
「……はいっ!?」
「やった仲。そりゃもう、ズッコンバッコンよ」

 旦那さんは両手を少し前に向け、腰を動かす。すっごく下品!

「浮気だぁ! 不倫だぁ!」
「違う違う。ちゃんと買ったんだから」
「そういう問題じゃない!」

 全く、男というものは風俗を別勘定するんだから。本当は奥さんが居れば風俗に来ちゃいけないんだぞ。これは私のお客の一人にも言わなきゃならないことだけど。

「ゆみさんも俺とのセックスは燃えるって言ってるし、なかなかのもんなんだぞ」
「そんなの聞いてません! 女将さんがかわいそうだと思わないんですか!?」
「ん? ああ、お前知らないんだな」
「??」

 旦那さんはニヤッと笑う。この人は嫌な笑い方しかしない。

「あいつだって客取ってたんだぞ。俺とあいつも、元々は買った買われたの関係」
「ええっ!? 女将さんって……」
「昔、嬢やってた。なんなら、お前の客二人ともやったことあるぞ」
「……ええっー!!!!????」

 衝撃の事実だった。女将さんが元風俗嬢。しかもろくさんや小石さんもお客として来てたなんて……。
 そういえば、女将さんは二人のことをよく知ってるみたいだった。そりゃ経験があるんだもん。当然だったわけだ。

「こんな場所で女将やってんだ。当たり前だろう?」
「そんな当たり前、存じないですよ……」

 女将さんは綺麗な人だ。もう40過ぎているのに、まだまだ女性としての魅力がある。若い頃は人気だっただろうな。

「旦那さんとゆみさん……。女将さんとろくさんや小石さん……。あぁー! 性の乱れだぁー!」
「いや、ここでその嘆きはおかしいだろう」

 今の自分と同じ仕事をしていた女将さん。だからこそ、私をここに引き入れたことに罪悪感を持っていたのだろう。
 そして、女将さんもこの仕事に後悔しているのかもしれない。それで私を心配してくれていたんだ。

 私も今していることに後悔する日が来るのだろうか。ちょっと憂鬱。

「言っておくけど、あいつが俺に惚れたからな」
「……はぁ?」

 そんなこと聞いてない。あくまでも俺は加害者じゃない、みたいな態度である。

「俺とのセックスはハマるんだよ。あいつもその口。お前は俺を酷いやつにしたがるけど、俺はむしろ手を差し伸べてるほうなんだからな」
「……ふーん」
「何だその興味の無さは」

 誰が信用するか。旦那さんはええかっこしいだから、きっと話を盛っている。それは間違いない。

「まあそのうちわかるから、な。そうだ、そろそろ新しい客を考えてるからそのつもりでな。それじゃ」

 旦那さんはそう言ってカウンター奥の事務所へと入っていった。
 新しいお客さん。その人はまた初心者向けの優しい人なのだろうか。
 それとも、今度こそここに来たことを後悔するような相手になるのだろうか。

 私には、ちょっとした恐怖心が芽生えていた。

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