1話 旅館で働きたい!7
思っていたよりも痛くなかった初体験。きっとろくさんが優しくしてくれたからだろう。
挿入よりも、前戯のほうが印象的だったかもしれない。
胸から乳首へ舌が這う。初めに感じるくすぐったいからすぐに一転、心臓がぞわってなって、体中に変な電気が流れた。
それは不快感だった。でも、だんだん慣れていくと、それが楽しくなったのも本当のところ。
そしてついに、……おまんこに魔の手が伸びた。指が中にまで入ってくる。自分で中に何か入れたことが無い私には、気持ち悪くて仕方なかった。
でも、やっぱりだんだん慣れていく。さらにそこを舐められた時には、……気持ち良かったと言えなくも無かった。
誰にも見られたことが無い場所を見られ、触れられ、舐められる。それを一気に体験したのだ。私はまだ夢の世界に居るような気分だった。
しかし、まだ夢は醒めないらしい。再び私はろくさんの下。
私は目を丸くしながら、もう狼になってるろくさんを見ていた。
「二回戦っ!?」
「そう! 男の人が二回射精して終了なんだ!」
そう言ってまたキスされる。だからキスも初めてなんだってば! そう簡単にしないでほしいのに。
でも、キスは手放しで気持ち良い。ろくさんの唇が包み込んでくれる感じ。舌が頭をなでるように私の舌を触る。
「んはぁ……。わ、わかりましたぁ……」
「可愛いよ、葉奈子ちゃん。本当に、世界一可愛いよ」
優しいろくさんだけど、ここまで来ると、やっぱり相当なスケベだということが嫌でもわかる。欲望とはしっかり目で見えるものらしい。
まあ、嫌じゃないけど。必死な大人ってちょっと可愛い。
「じゃあ今度は……」
ろくさんは私の体をいとも簡単に動かす。私はもうされるがままだった。
私は横向きになり、ろくさんが私の右脚をまたぐ。左脚を持たれると、それが入れる体勢らしい。
「入れるね」
「はい……」
二度目はあっさり始まった。さっきよりも早く、ろくさんのおちんちんは私の中に侵入する。
「あぁ……」
さっきほど痛くは無いものの、やっぱりちょっとは痛い。
程なくして、体の接着面が増える。ろくさんの全部が私の中に入ったということだ。
「んっ……」
ろくさんは本当に気持ち良さそう。目を瞑って、ちょっとよだれまで垂らしちゃっている。男の人にとっては、セックスってそんなに気持ち良いんだ。
私は複雑。どちらかというと、舐められている時のほうがまだ気持ち良かったかも。
「はぁ……あぁ!」
「あぁん!」
ろくさんはだんだん出し入れのスピードを上げていく。リズミカルなピストン運動に、徐々に私のおまんこも慣れていく。
何か色んな場所に当たる。そして、その中に気持ち良いとこが確かにあるわけで。
「……あん! ……んっ!」
私はそれはもう気持ち良さそうな声を出していた。本当に出ている分と共に、ろくさんが喜ぶかなって思ってのわざと出している声だ。
ろくさんも気を良くしてか、動きが速くなっていく。そして目が合う。
「最高だよ! 葉奈子ちゃぁん!」
「あっ! んっ!」
やっぱり声を出すと嬉しいのかな。ろくさんは心の奥底から快感を味わっている。そういう姿を見ると、私も更に気持ち良いが増えていく。
大の男の人が、私に入れることに夢中になっている。セックスって凄いな。
「あっ! あっ! んっ……」
突然、動きが止まった。何事かと思ったら、上げていた左脚を下ろしたいということらしい。私はお望みのままに動くと、ろくさんにお尻を向ける形になった。
「最後は後ろから行くからね」
「はぁ……、はい……」
バックってやつだ。最も動物的に見えるあれ。まさか初体験の日にそんな構えを取ることになろうとは。
「葉奈子ちゃん! 葉奈子ちゃぁん!」
「ひゃん! あっ! あぁん!」
そこからは一直線だった。ろくさんは私に精を出すことしか考えてない感じだし、私は身動きを取らずにただ受け入れていた。
「あぁん! あぁん!」
「イクよ! あぁぁ! イクっ!!!」
最後の速い往復の後、ろくさんは私の腰を強くつかんだ。そして痙攣する。ああ、射精してるんだ。もしゴムが無かったら、これは私の子宮に入ってくるんだ。そうしたら、それが赤ちゃんになるんだ。
私、今凄いことをしてるんだなぁ。
ろくさんのおちんちんが抜かれると、私はそのままうつぶせに倒れた。少しの間、休ませてもらおう。
これでやっと本当に、今日の仕事は終わったのだった。
1話 旅館で働きたい!8
目を覚ました時に居たのは女将さんだった。女将さんは私に上着を掛けてくれる。
「大丈夫かい?」
「女将さん……」
どうやらお布団で本当に眠ってしまっていたようだ。女将さんの隣には、私の初体験のお相手が居た。
「寝顔も可愛かったよ」
「……」
私は裸だっていうのに、ろくさんはもう服を着ていらっしゃる。すぐにでも帰路につける体勢だった。
お布団には血が付いていた。当然ここで殺人があったわけではなく、これは私のあそこにろくさんが単刀直入してしまった結果だった。
「よう! お疲れちゃん!」
旦那さんが楽し気に入ってきた。私は体を隠しながらじろっと睨みつける。この人はわざと私に新地のことを説明しなかったのだろうと思ったからだ。
「どうだ? ろくさんは優しかっただろう?」
「……優しかったですけど」
そういう問題ではない。ちゃんと説明を受けていたらどうしたのかはわからないけれど、やっぱり何も説明が無いままだったのには不服だった。
「それに、ろくさんのは小さいからな。初心者向けだ。はははっ!!」
「旦那! それが理由で僕だったのかい!?」
やっぱり小さかったんだ、あれ。単刀ならぬ短刀だった、とかいう空しいオチ。
「それにしてもちゃんと処女だったんだな。俺の目に狂いは無かった。だろう? ろくさん」
「ま、まあね」
処女というところまで狙いすまされたらしい。そんなに処女感あったのか、私。
「これから、ここで働けるのかい?」
女将さんは心配そうな顔で言った。きっと、面接の時からそれを言おうとしていたのだろう。
今日までの間も、ずっと気を遣っていてくれた気もするし、女将さんにはきつく言うことなど出来ない。
私はこれからのことを考える。捨てられたような身の私。住み込みの旅館で働くつもりが、まさかの性風俗だった。これから私は、ろくさんだけでなく、色々な人と肌を重ねることになる。
正直怖い。
でも、この旅館のことを考えると、そんなことを言っていられないような気がした。経営難のこの旅館では、私が必要とされている。それがよくわかっているからだ。
「……その、正直不特定多数とするのは怖いっていうか。ろくさんみたいな人ばかりなら良いんですけど、怖いことする人とか居たら――」
「その辺は任せとけ。葉奈子ほどの上玉は中々いない。しばらくは初見お断りで良いよ。葉奈子なら客単価を高く出来そうだから、それで十分稼げる。
そして、もし何かするやつが居たら、俺らがちゃんと守ってやる。こういう場所だとな、ちゃんと守ることの出来る人が居るもんだ。そこは心配するな」
そういえば、風俗のバックにはヤクザが居るとか聞いたことがある。そういう人に守られるということだろうか。それはそれで怖いような。
でも、常連さんばかりというのなら、やっていけるかもしれない。
その人たちと……するだけで旅館が守れるのならば、頑張れるかもしれない。
「そうだ、今日の給料やるよ」
「……日払い?」
まだ一日も終わっていない中、給料が配布された。分厚い封筒……分厚い!?
「な、な、な、中は全部諭吉さんなんですけど!?」
「処女は価値が高いんだ。なあろくさん」
ろくさんは動揺するように笑う。ろくさん、私とセックスして、こんなにお金を払ったの!? あれだけ優しくしてくれて、こんなに払わされるの!?
ざっと30万くらいあるんじゃないだろうか。これ、月収って聞いていた分なんですけど。
「何かの間違いなんじゃ……」
「今回は特別だからな。これからは一度でこんなにもらえることなんてないさ。でも、葉奈子なら1回で3万は稼げる」
「1回で3万!?」
10回で30まーん。100回で300まーん。
「マジっすか……。そんなに割が良いの!? 月収30万どころじゃないじゃないですか!?」
「以上、って書いてあったろ? 最低でも月に10人は来るだろうって計算で、普通ならもっといくよ。泊まりで入ることもあるから、その時ならさらに一度の料金は跳ね上がる」
「――やります! 私やります!!」
ろくさんみたいな人とエッチしてこれだけもらえる。何て恵まれた仕事なんだ! 私はもはや感動していた。
「もっとよく考えて……」
「女将さん! 私は旅館のために頑張りたいんです!」
お金の話になって、私は一気に軟化した。あれで3万円なんて、そんな仕事を知ったら引けるはずがない。
「……決まりだな」
「これからよろしくお願いします!」
女将さんは頭を抱える。大丈夫、女将さん。私はやれるよ!
「もう次の予約しておこうかな」
「毎度!」
こうして、私の生きる道に色が付いた。当初の予定とは違うけれど、これで良かったと思う。
割烹旅館さくらの看板娘とは私のことだ。お馬鹿な私は燃えていた。
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