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夏の日の少年10 洋介
長い間キスをしていた。きっと、さっき父がしていたのよりも長いキスだったと思う。
唇が離別した後、洋介は名残惜しくてジッとそれを見つめていた。そんな洋介の顔を見て、葉奈子は愉しそうに笑う。
「……気持ち良かった?」
声を殺しながら、葉奈子が聞いた。洋介は頷く。
すると、葉奈子はまた顔を近づけてくる。またキスをするのかと思えば、葉奈子は唇の横のほうをペロっと舐めた。
そのまま懐いている犬みたいに頬っぺたを舐める。これが性行為なのかどうかも、洋介には分からなかった。
舌は、次に耳のほうへと移動する。軟骨の隙間に舌が這う。洋介は耳がこんなに感じるところだなんて知らなかった。
「あ、あぁ!」
「……しっ」
漏らした声を、父が寝たふりをしていることなど知らない葉奈子は制した。それでも耳への愛撫はやめない。洋介は身を悶えてしまう。
「はぁ……はぁ……」
時折、葉奈子が洋介の表情を窺ってくる。旅館の外で出会ったときの可憐な葉奈子は影を潜め、妖艶な小悪魔が彼女を支配している。
葉奈子は洋介との行為を楽しんでいた。不慣れな洋介を弄んでいるのだ。
洋介は手を伸ばした。もちろんそこは、葉奈子の胸だ。乳首に触れると、一瞬ビクッと体を震わせるが、抵抗することは無い。
柔らかな胸を撫でまわす。両手で堪能した後、右手だけ葉奈子のお尻のほうへと移動させる。どこもすべすべで感触が良かった。
葉奈子が耳を舐めるたびに、洋介は体を震わせる。小さく声を漏らす。
両耳を舐めた後、葉奈子は体を引いて一息ついた。洋介も触っていた手を引っ込める。
「はぁ――」
葉奈子はとても興奮しているように見える。右手で自分の陰部を触っている。それは自慰行為ではなく、確認のための行動のようだ。
そして、視線を周囲に巡らせる。父の姿を確認してから、ティッシュとコンドームの場所を見る。そして、コンドームを手に取った。
三つ置いてあったコンドームはそれが最後だった。葉奈子は息を乱しながら、その袋を破いた。
葉奈子はそれを洋介のペニスの先へ当てた。しかし、付け方がわからないようで、随分手間取っていた。
「あれ……?」
意外と不慣れなんだ。洋介は少しホッとする。
コンドームの装着に手間取るという行為は、洋介のペニスへの愛撫になっていた。こそばゆいような気持ち良さが襲う。
「んあぁ……」
「ま、待ってね。うーん……こうかっ」
向きを変えることで納得がいったらしい。葉奈子はそのままコンドームの巻かれている部分を伸ばし、洋介のペニスを覆った。
準備は整った。洋介は期待いっぱいで様子を眺めていた。
「い、入れるからね……」
頷く。息を切らしながら、期待しながら。
葉奈子は洋介のペニスにおまんこをあてがった。そしてそのまま、ゆっくりと腰を下ろした。
「あ、あぁ……」
「んっ……」
ペニスがどんどん葉奈子へと入っていく。熱い、気持ち良い。
これは気持ち良すぎる。さっきのコンドームの装着時の愛撫と、葉奈子の中の気持ち良さによって、射精感はすぐに訪れた。
「駄目……」
まだイきたくない。葉奈子の中に居たい。でも、これが我慢できるわけがない。
「あぁっ!」
「えっ……?」
ペニスが葉奈子の中に入り切るのと同時に、洋介は射精した。情けない瞬間だった。
「あっ――、あっー――」
痙攣が続く。目を開けると、葉奈子がずっと射精しているときの洋介の顔を眺めていた。
恥ずかしい。情けない。洋介はぽけーっと口を開けながら、審判を待つような気持ちで葉奈子を見つめた。
「イッちゃった……?」
洋介は頷いた。
「ごめんなさい……」
「ううん、しょうがないよ。なんか、私の中って気持ち良いらしくって……ごめんね」
それは謝るようなことでは無い。ずいぶん気を遣わせているようだ。
葉奈子は洋介のペニスをおまんこから抜いた。葉奈子は葉奈子でボケっとしている。
洋介はすでに3回射精している。一日でこんなに射精したのは初めてのことだ。
葉奈子はまだ相手をしてくれるだろうか。そして、もう一度射精できるだろうか。不安でいっぱいになる。
少しの間、お互いが無言で固まっていた。葉奈子が何を考えているのかはわからない。洋介はもう一度することだけを考えていた。
葉奈子は、寝よう、と言い出すだろうか。その前に行動に移さなければならないのではないだろうか。
「洋介くん――」
葉奈子が沈黙を破った。洋介は焦って、再び葉奈子に飛びついた。
「はぁ、はぁ、葉奈子さん!」
「ま、待って! 強引なのは駄目だって! そして静かに……」
葉奈子は洋介の腕をつかんだ。前向きにもたれかかるような形で、押し倒すまではいっていない状態。
洋介のペニスは、驚くことに再び勃起していた。葉奈子の肌に触れるだけで、ちゃんと起つらしい。安心すると共に、何が何でももう一度したいという気持ちが強くなった。
「さっきのじゃ……その……」
「わ、わかるんだけど……ね。その……ゴムが……」
さっきので置いてあったものは使い切ってしまっていた。予備とかあるのではなないかと思っていたが、葉奈子の様子からは無いらしい。
「な、無いの……?」
「どこにあるのか知らないんだよね……。こういうの、女将さんがいつも用意してくれていて……」
絶望感でいっぱいになった。さっき不本意に出したことが悔やまれる。
「はぁ……、はぁ……」
洋介は葉奈子に手を掴まれたまま固まっていた。ペニスだけが動き、葉奈子の肌によって刺激されている。
息を切らしながら、前かがみでメスに迫っている様子は、自分でも欲情している犬みたいだと思った。
「……」
すると、葉奈子は無言のまま、体勢を変えた。洋介から手を離し、枕を腰のところに入れる。
そして、脚を広げた。葉奈子の恥部が丸見えになる。
「葉奈子……さん?」
「……」
葉奈子は顔を赤らめながら、うんうん頷く。これは、そのまま入れていいということではないだろうか。
洋介は急いでセックスの体勢を取る。葉奈子の気が変わらない内に、膝立ちになり、ペニスを入口に当てた。
「……イきそうになったら抜いてね」
それは限りなく小さい声だった。洋介は声にならない声で、はい、と言った。
洋介は正常位の体勢から、腰を押し進めた。
父のものが入ったから狭くないと思っていたそこは、思っていたよりも随分狭い場所だった。だからこそさっきもあっさり射精したのだ。
熱い中へ入っていく。快感がペニスから全身へと伝わっていく。
「あぁ……」
「あ、あつ……」
快感が走る。さっきも気持ち良かったけれど、今度はそれよりも気持ち良い。
洋介はコンドームを付けるセックスも、付けないセックスも初めてである。そのうえで、付けないセックスがこんなにも気持ち良いのかと驚愕した。
もはや、コンドームは気持ち良くなりすぎる葉奈子の中から、洋介のペニスを守ってくれるもののように感じる。コンドームが無いということは、洋介のペニスがノーガードで葉奈子のおまんこと対峙することと同じ意味なのかもしれない。
セックスってこんなに気持ち良いのか。さっきは感じる余裕も無かったが、今度は気持ち良さに酔いしれることが出来た。
全部が葉奈子の中に納まると、葉奈子は小さく微笑んだ。
「入ったね」
「うん……」
父でも余裕が無かったくらいだから、葉奈子の中はよっぽど気持ち良いのだろう。初めてでこんな快感を味わってしまったら、もう他の女とはセックス出来なくなるのではないだろうか。
洋介はゆっくり腰を引いた。油断しているとすぐにイッてしまいそうだから、噛みしめるみたいにゆっくりと動く。
「ん――……」
葉奈子の声が漏れると、洋介はまた腰を押しすすめる。ああ、これがセックスなんだ。気持ち良い。
「あぁん♪ あぁ♪」
「はぁ、はぁ、はぁ」
引いて、押して、引いて、押して。段々ちゃんとしたセックスの動きになっていくと、葉奈子からは甘い声が出てきた。
気持ち良い、気持ち良い、気持ち良い。洋介は夢中で腰を動かす。
速くなるとすぐに絶頂の予兆が来るので、その度に速度を落とす。抜きたくないという一心で、洋介は耐えていた。
「いいよぉ♪ 洋介くん、気持ち良いよぉ♪」
「僕も……!」
葉奈子はすでに声を殺せていない。少しは控えめだろうけれど、十分すぎるほどの声を出していた。
心底気持ち良さそうな顔をする葉奈子を見ると、洋介の快感もピークになる。イッてしまうと終わってしまう。でも気持ち良くてイッてしまいたい。セックスとはこのジレンマで出来ているのではないだろうか。
「その……奥のほうで、ぐんっ♪ ぐんっ♪ ってやって♪」
「う、うん……」
奥に入れた後、さらに腰を押す。それが葉奈子には気持ち良いらしい。その葉奈子を見ると洋介も気持ち良い。
夢中になって葉奈子の要求を聞いていると、もう射精する寸前まできていた。
ああ、終わってしまう。抜かなければならない。
洋介は腰を引く。でもまた吸い込まれるみたいに奥へと進めてしまう。これは……抜くことが出来そうにない。
その行為を繰り返すと、それがただのセックスのピストンの動きにしかならなかった。もう……出る。
「あぁ……イッ……」
洋介は射精を告げなかった。漏らすように、洋介は葉奈子の奥で射精した。
「気持ち良い……♪」
「あぁ……」
洋介が痙攣していると、葉奈子がふと真顔になった。ばれたのだ。
「……だ、出したの?」
「……」
頷く。申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも、洋介は抜こうとはしなかった。
「熱いのが入って来てる……。駄目だよ、中で出しちゃ……」
「ごめんなさい……」
嫌がる言葉を放つ葉奈子であったが、その顔には恍惚としたものがあった。葉奈子も快感と戦っているようだ。
葉奈子の中で全て出し終えても、洋介はまだ動かなかった。そうするうちに、またペニスに血が巡ってくる。
「ああぁ……、中出しされちゃった……。熱い……」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「また洋介くんの、硬くなってる……まだエッチしたいの?」
洋介は頷いた。そして、ゆっくりとまたその硬いペニスを動かし始めた。
「やぁん♪ ……駄目ぇ♪」
抜かずに3回目が始まる。まだまだ出来そうなくらい、洋介の興奮は醒めない。
ペニスに少し痛みがある。この間中なら射精は出来そうにない。今が葉奈子の中を動き回るチャンスだった。
「あぁん♪ あぁん♪ すごいぃ♪」
「葉奈子さぁん!」
「駄目ぇ♪ 何でこんなに気持ち良いのぉ♪」
快感が痛みを上回る。洋介は正常位でのピストンを繰り返す。葉奈子の脚を持っては素早く腰を動かし、時にはそのおっぱいを刺激する。
葉奈子と一つになっているこの時は、天国に居るようだった。快感の支配が心地よい。
「あぁ! 良いよ! あぁ!」
「駄目なのにぃ♪ 良いよぉ♪」
洋介は激しいピストンをする。また射精の時が近づいてくる。
今度は恐れずに、その快感へと真っすぐに向かっていく。葉奈子の膣の締めあげに、ペニスの全てを委ねた。
「またイく! イくよぉ!」
「あぁん♪ 私ももうイッちゃう♪」
激しい往復。葉奈子にもイッてもらいたい。洋介は頑張って奥のほうを突く。
射精の瞬間、葉奈子は両脚で腰を抱かれた。これは、中で出して良いという、中で出せと強制するものだった。
望み通り、洋介は奥で射精した。葉奈子の子宮に大量の精液を注ぎ込んだ。
夏の日の少年11
ちゅん、ちゅん、と雀の声が聞こえる。
目覚めると、隣には少年が寝ていた。私よりも年下である。ランドセルを背負っていてもおかしくない見た目である。そんな少年。
私は体を起こし、頭を抱えた。隣の布団には今野さんがまだぐっすりと眠っている。
嫌な感じがあって、私は下腹部に力を入れた。すると、股から白濁としたものが……。
洋介くんの精子である。私の顔は青ざめたものになる。
ゴムが無くなった後、ゴム無しで入れさせてしまった。イきそうになったら抜いて、とは言ったが、洋介くんにそんなこと出来るとは限らないというのに。
その後、今度は自ら中に出させてしまった。……いくら気持ち良かったとしても、どう考えてもやりすぎだ。
「あぁー……」
私は頭を掻く。このショタコン淫乱ロリ痴女め! って自虐的な言葉で責め立てる。
このやってしまった感。もう犯罪者だよ、これ。
ティッシュでそれを拭いながら、ふと洋介くんを見る。
可愛い寝顔だ。――って思うとまた罪悪感が無限ループになりそう。
不意に、洋介くんが動き出した。起きたらしい。
むくっと起き上がると、私と目を合わせた。
「……おはよう」
「お、おはよう」
照れくさい。事後の朝なわけだから当然だけれど、少年とこんな空気になることなんて普通は無い。
「は、葉奈子さん……」
「どうしたの?」
洋介くんは視線を下げる。呼んでおいて要件を言わないのか。その視線は私のおっぱいを捉えてやいないかい?
すると、すぐに洋介くんはちゃんと私の目を見てくれた。顔を赤くしながら、ボソッと呟く。
「す、好き……」
「……」
か、可愛い。私、告白されました。相手は子供だけど、愛の告白をされちゃいました。
しかし、そんな少年と私は……――ってまた罪悪感ループが!
「あ、ありがとう」
洋介くんは顔を真っ赤にする。罪悪感ループはまた来そうだけど、中出しされたこと自体は相手が洋介くんだから良かったということにしておこう。
念願のおじさん以外との交流。ここまで幼いのは予定外だし、結局普通の恋愛に繋がりそうなものではなかったけれど、悪いものでは無かった。
相変わらず感じ過ぎてしまったのも、私のことを好きと言ってくれる洋介くんが相手だったから、洋介くんが気持ち良くなってくれたのならそれで良かったかなって思える。
私は何だかいつもよりも満足していた。
体を洗い流しに行ったりしてから、ついにチェックアウトとなった。
訪れた時よりも心なしか大人っぽくなっている洋介くん。うん、一皮むけたよね。童貞じゃなくなったわけだし。ああ、これまた罪悪感に……。
「よう、どうだった?」
デリカシー欠けの旦那さんが、洋介くんに向かって聞いた。アホ。
「え? あ、か、可愛かった……」
「そう? あ、ありがとう」
可愛いのはあんたですって。洋介くんとはまた目が合わなくなっている。
「葉奈子ちゃん」
不意に、今野さんが耳打ちしてきた。
「ありがとね」
「え? は、はい……」
ありがとね。それは私とのセックスに対するお礼なのか。……うーん、そうは思えない。
そして、さっきの旦那さんもどうなんだ? 洋介くんの感想があれだったから良かったものの、いつもの旦那さんからすれば、あれはセックスの感想を聞いていたんじゃないのだろうか。
「それじゃあ、またよろしくね」
「……ありがとうございましたー」
何かおかしい気がする。というかはめられた気がする。今野さんが実は起きてたとかもありそうだし、それどころか、最初からそのつもりだったのではないのか。
「若い客はどうだった?」
「……そりゃ、おじさんよりは良いですよ」
名残惜しそうにチラチラとこっちを見てくる洋介くん。それを見ていると、何でも許せるような気になってくる。
……でもなぁー。と、この罪悪感ループからはしばらく抜け出せそうになかったのだった。
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